「解体の仕事をするには、どの資格が必要ですか」と聞かれたとき、資格名を一つだけ答えることはできません。解体現場には、未経験者が配属前に受ける安全教育、重機や玉掛けなど担当作業で必要になる技能講習、石綿作業で事業者が実施する特別教育、経験を積んで目指す施工管理の資格があり、それぞれ目的と受講できる時期が異なります。

先に知っておきたい結論

1未経験で入社する前に、資格を一括取得する必要はありません入職時に一律の国家資格が求められる職種ではありません。ただし、実際に担当する危険有害作業には、事業者による教育や所定の講習が必要です。
2「資格」「技能講習」「特別教育」「会社の許可」を分けます個人が持つ資格と、会社が工事を請け負うための許可・登録、現場ごとの選任は同じ意味ではありません。
3取得順は、希望する作業と実務経験で変わります重機を操作する人、足場に関わる人、石綿作業に従事する人、施工管理を目指す人では、必要な教育と受講資格が違います。
4費用は受講料だけで比較しません受講料、交通費、写真・証明書類、受講日の賃金扱い、再受講や更新の有無を、雇用先へ同じ条件で確認します。
Contents
  1. 解体工事に必要な資格の「すべて」とは何か
    1. 最初に「個人の資格」と「会社の制度」を分ける
    2. 「免許がないと解体できない」という言い方だけでは足りない
    3. 未経験者に必要なのは、まず安全に働くための確認
  2. 未経験から資格を取る順番は「入社前・配属後・経験後」で分ける
    1. 入社前は、希望する働き方と雇用条件を確認する
    2. 配属後は、実際に行う危険有害作業に合わせる
    3. 経験後は、受験資格と役割を確認してから目指す
  3. 安全作業で関係する教育・技能講習
    1. 車両系建設機械(解体用)は、操作する人のための講習
    2. 玉掛け・小型移動式クレーンは、吊る荷の作業で確認する
    3. ガス溶接・火気作業は、作業方法と火災予防を一緒に見る
    4. 足場・高所・コンクリート構造物は、現場の条件で要件が分かれる
  4. 石綿を含む解体では、調査者・主任者・作業者を混同しない
    1. 事前調査と作業の教育は別の役割である
    2. 石綿使用建築物等解体等業務特別教育は、従事者に関係する
    3. 石綿作業主任者は、作業方法を決めて指揮する役割
  5. 受注・施工管理で関係する資格と実務経験
    1. 解体工事施工技士は、現場管理へ進む選択肢
    2. 施工管理技士・建築士・技能士などは、会社の要件と照合する
    3. 登録解体基幹技能者は、熟練技能者の次の段階にある
    4. 建設キャリアアップシステムの能力評価は、資格そのものと別に見る
  6. 資格取得にかかる費用は、受講料だけでは決まらない
    1. 費用を「本人負担」と決める前に会社へ聞く
    2. 受講料の比較は、同じ講習・同じ条件で行う
    3. 実務経験が必要な資格は、勉強費用以外の準備がある
  7. 自分に必要な資格を決めるための実践手順
    1. 手順1:希望する仕事を一つの動詞で言う
    2. 手順2:その作業で、誰が教育を行うかを聞く
    3. 手順3:受講条件と実務経験の開始日を確認する
    4. 手順4:費用と受講日の扱いを文書で確認する
    5. 手順5:一年後・三年後の役割から逆算する
  8. 発注者が解体業者の資格について確認するときのポイント
    1. 資格証の有無だけで業者を判断しない
    2. 石綿では、調査結果と作業体制を確認する
    3. 見積書では「資格費」を単独の品質保証と見ない
  9. 作業別に見る資格地図|木造・内装・RC造・搬出で何が変わるか
    1. 木造解体では、手元作業と機械作業を同じにしない
    2. 内装解体では、粉じん・石綿・設備の確認が先にある
    3. RC造・鉄骨造では、構造の安定と作業主任者の役割が大きい
    4. 発生材の積込み・搬出では、荷役と車両を分けて考える
  10. 資格取得で起こりやすい失敗と避け方
    1. 求人の「資格取得支援」を、全額負担の約束と解釈する
    2. 修了証があれば、どの現場でも同じ作業を任されると考える
    3. 受験資格の実務経験を、自己判断で数える
    4. 資格を取ることが、単独作業の条件だと誤解する
  11. 採用面談・現場配属でそのまま使える確認文
    1. 未経験で入社する前の質問文
    2. 重機・石綿作業を希望する場合の質問文
    3. 経験後に施工管理へ進みたい場合の質問文
  12. 講習・特別教育・試験の案内を読むときのチェックポイント
    1. 「技能講習」と「特別教育」の名称・対象業務を照合する
    2. 受講資格の「経験」は、年数と内容の両方を見る
    3. 費用案内の税込・教材・再試験・キャンセル条件を確認する
    4. 修了証の保管と再交付の連絡先を決める
  13. 会社が資格取得を支えるときに整えるべきこと
    1. 教育計画は、採用時の約束と現場配属をつなぐ
    2. 資格者の名前を並べるより、配置と引継ぎを確認する
    3. 経験を積む機会と安全の線引きを両立させる
    4. 制度の変更を、古い社内表だけで判断しない
  14. よくある質問
  15. まとめ

解体工事に必要な資格の「すべて」とは何か

この記事でいう「すべて」は、世の中にある資格を無制限に並べる意味ではありません。解体工事の受注、施工管理、安全作業に法令上関係する資格、技能講習、特別教育を、実際の役割に沿って整理する意味です。たとえば普通自動車免許、建設機械の整備資格、運送や警備の資格などは、仕事の内容によって関わりますが、全ての解体作業者に同じように求められるものではありません。

最初に「個人の資格」と「会社の制度」を分ける

個人の資格には、解体工事施工技士、施工管理技士、技能士、作業主任者技能講習の修了などがあります。一方、建設業許可や解体工事業登録は、会社が工事を請け負うための制度です。会社には営業所の技術者や、工事の規模・内容に応じた主任技術者・監理技術者などの配置が関係しますが、それは「現場にいる全員が同じ資格を持つ」という意味ではありません。

国土交通省は、建設業者が営業所ごとに一定の資格または経験を持つ専任の技術者を置くこと、登録解体工事試験の合格者が一般建設業の営業所技術者等・主任技術者の要件と関係することを案内しています。個人のキャリアを考えるときは、会社の許可・登録の話と、自分が担当する作業の教育を別の欄で確認すると混乱を避けられます。

区分 何を示すか 主に確認する人
個人の資格・試験 施工管理や専門的な知識・技能を示す。受験資格に実務経験がある場合もある。 本人、雇用先、配置を検討する会社
技能講習 車両系建設機械、玉掛け、ガス溶接、作業主任者など、特定の作業に必要な知識・技能を学ぶ。 実際にその作業を担当する人と事業者
特別教育 危険または有害な業務へ就かせる前に、事業者が行う教育。 労働者を就かせる事業者
会社の許可・登録・選任 工事を適法に請け負い、技術者を配置するための会社側の要件。 事業者、発注者、行政窓口

「免許がないと解体できない」という言い方だけでは足りない

検索では「解体 免許」「解体屋 資格」という言葉も使われます。しかし、解体に関係する要件は、国家試験に合格して得る資格だけではありません。機械を運転するための技能講習、作業に従事させる前の特別教育、現場で選任する作業主任者、会社の営業所に置く技術者が混在しています。

たとえば、重機を操作しない手元作業者と、解体用の車両系建設機械を運転する作業者では、必要な教育が同じではありません。石綿がある建築物の解体等に従事する労働者と、石綿作業主任者を選任される人も役割が違います。求人や現場の「資格必須」という表示は、資格名だけで判断せず、誰が何の作業をする条件なのかを聞き返すことが大切です。

未経験者に必要なのは、まず安全に働くための確認

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagでは、解体工は入職に当たり特に資格や学歴が必要とされない一方、入職後にOJTで作業手順を学び、実務経験を重ねながらガス溶接、地山掘削、足場組立、鉄骨組立、コンクリート造の工作物の解体などの講習へ参加すると仕事の幅が広がると説明しています。

これは「教育なしで危険な作業ができる」という意味ではありません。雇用された後、事業者は担当させる業務に応じて安全衛生教育を行い、必要な特別教育や技能講習を確認します。未経験者が最初に確認するべきなのは、資格証の枚数ではなく、最初の配属、教育の実施者、単独作業を任されるまでの手順です。

入場前に立入区分と保護具を確認する解体現場の責任者と作業員
入社後の教育は、作業内容と現場の危険を確認してから組み立てます。

未経験から資格を取る順番は「入社前・配属後・経験後」で分ける

資格取得を急ぐあまり、予定のない講習を先に受けると、費用と時間がかかるだけで現場で使えないことがあります。逆に、担当業務が決まったのに必要な教育を後回しにすることは安全上の問題になります。順番は、入社前に確認すること、会社の配属後に受けること、実務経験後に受験することの三段階へ分けると考えやすくなります。

入社前は、希望する働き方と雇用条件を確認する

未経験者が採用面談で確認したいのは、「資格取得支援があるか」という一文だけではありません。手元作業から始めるのか、将来は重機操作を目指すのか、石綿を含む工事へ従事する可能性があるのか、施工管理を目指すのかで、必要になる教育が変わります。普通自動車免許の有無が業務上望ましい求人もありますが、それだけで解体作業の資格要件を満たすわけではありません。

面談では、①最初に担当する作業、②現場へ入る前の教育、③取得候補の講習名、④費用と受講日の扱い、⑤経験を積んだ後のキャリアを聞きます。「何の資格を取れますか」ではなく、「入社後一年で担当する作業と、その前に必要な教育は何ですか」と具体的に質問すると答えを比較できます。

未経験者が採用前に確認する五項目

1最初の担当片付け、養生、手元、運搬補助など、最初の業務範囲を確認します。
2教育の時期雇入れ時教育、現場入場前教育、特別教育、技能講習をいつ誰が手配するか確認します。
3費用の扱い受講料、交通費、写真・証明書類、受講日の賃金扱いを確認します。
4使用予定の機械・道具重機、玉掛け、ガス溶接、高所作業などを担当する見込みがあるかを聞きます。
5経験後の道筋施工管理、施工技士、技能者評価など、経験年数が必要な資格をいつ検討するか聞きます。

配属後は、実際に行う危険有害作業に合わせる

解体現場は、建物の構造、使用機械、足場、搬出方法、石綿の有無によって危険が変わります。車両系建設機械を操作しない人に機械運転の技能講習を先に求める理由はありませんが、操作を担当するなら、必要な区分を事前に確認しなければなりません。同じように、ガスを使う作業、荷を吊る作業、足場の組立て等に関わる作業も、本人の担当内容で教育が決まります。

教育は修了証を受け取れば終わりではありません。作業手順、立入禁止区域、合図、保護具、体調不良時の報告方法を、現場の条件に合わせて理解する必要があります。講習名が同じでも、現場で扱う機械・荷・構造物・周囲の人の動きまで説明できなければ、独り立ちの判断には使えません。

経験後は、受験資格と役割を確認してから目指す

解体工事施工技士、施工管理技士、登録解体基幹技能者、作業主任者の一部には、受験または受講に実務経験、学歴、保有資格などの条件があるものがあります。経験年数だけを満たしていても、どの工事の、どの立場の経験として認められるか、証明書類を誰が準備するかが問題になることがあります。

そのため、経験後の資格は「年数が来たら申し込む」ではなく、日報、工事経歴、雇用関係、従事内容の記録を会社と確認して進めます。実務経験が必要な資格は、応募直前ではなく入社時から記録方法を確認しておくと、後から証明を集める負担を減らせます。

安全作業で関係する教育・技能講習

解体現場で関係する安全教育は、名称が似ていても対象作業が異なります。ここでは代表的なものを、全員が必ず持つ一覧としてではなく、「その作業をするなら何を確認するか」という地図として見てください。厚生労働省の職場のあんぜんサイトには、車両系建設機械(解体用)運転技能講習、玉掛け技能講習、ガス溶接技能講習、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習などが掲載されています。

車両系建設機械(解体用)は、操作する人のための講習

建物や工作物を取り壊すための機械を操作する仕事では、作業内容、機械の種類、機体重量などに応じて技能講習または特別教育が関わります。名称に「解体用」とあっても、すべての解体機械・すべての付属装置を一枚の修了証だけで扱えると考えるのは危険です。実際に使う機械、アタッチメント、作業場所、メーカーの取扱説明書、会社の作業計画を確認します。

操作者以外にも、誘導者、合図者、周囲で手元作業をする人の安全が関係します。操作資格を持つ人がいても、立入区域や合図が曖昧なら事故を防げません。重機の資格は「運転できる証明」だけでなく、現場で人と機械を離して動かす仕組みと一緒に確認する必要があります。

平坦な作業場所で解体用車両系建設機械の操作と安全な誘導距離を確認する作業員
重機の講習は、実際に操作する担当者と安全な誘導・離隔を前提に考えます。

玉掛け・小型移動式クレーンは、吊る荷の作業で確認する

解体では、切り離した部材、足場材、機械の部品などを吊り上げる場面があります。玉掛けは荷に吊り具を掛け外しする作業、クレーン関係は機械を操作する作業に関わるため、同じ「吊る仕事」でも役割が異なります。荷の重量、使用する機械、作業の方法で必要な資格・講習の区分が変わります。

資格を確認する際は、「誰が玉掛けをするか」「誰が運転するか」「誰が合図するか」「荷の下へ人が入らない計画か」を分けて聞きます。吊り作業では一人の資格名だけを見るのではなく、荷を掛ける人・動かす人・周囲を止める人の役割分担を確認することが安全につながります。

ガス溶接・火気作業は、作業方法と火災予防を一緒に見る

鉄骨や金属を切断するためにガスを使う場合、ガス溶接技能講習が関係します。火気を使う現場では、火花の飛散、可燃物、消火器、周囲の養生、作業後の火種確認など、資格・講習以外の管理も必要です。建物内に残置物や可燃性の材料がある場合、単に「切断できる人がいる」だけでは作業を始められません。

未経験者が火気作業を希望するなら、作業そのものだけでなく、火気監視や周辺の整理をどう行う会社かを確認します。ガス溶接の講習は、火を扱う作業を安全に計画できる環境とセットで初めて生きるため、費用の安さだけで教習先を選ばないようにしてください。

足場・高所・コンクリート構造物は、現場の条件で要件が分かれる

足場の組立て等、建築物等の鉄骨の組立て等、コンクリート造の工作物の解体等には、それぞれ作業主任者技能講習や特別教育が関係する場合があります。作業主任者は、危険な作業において事業者が選任する役割であり、作業する全員と同じものではありません。受講資格に経験が求められる講習もあるため、未経験者がすぐに受けられると決めつけないことが必要です。

足場を通行するだけなのか、組立て・変更・解体に従事するのか、コンクリート構造物のどの解体作業をするのかで確認先が変わります。「高い場所で働くから同じ資格」とまとめず、作業の対象・高さ・構造・役割を会社の安全担当へ伝えて必要な教育を確認することが正確です。

予定する作業 関係しやすい教育・講習の例 入社前に確認すること
解体用の機械を操作する 車両系建設機械(解体用)の技能講習または特別教育など 機体、アタッチメント、操作予定、受講の時期
部材を吊る・運ぶ 玉掛け、小型移動式クレーン等 荷の重量、玉掛け・運転・合図の担当
火気で切断する ガス溶接技能講習等 火気作業の手順、監視、養生、消火体制
足場・高所・構造物解体に関わる 足場関係の特別教育・作業主任者、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者など 組立て等への従事か、必要な実務経験・選任の有無

石綿を含む解体では、調査者・主任者・作業者を混同しない

石綿(アスベスト)が使用されている可能性がある建築物の解体・改修では、通常の解体作業に加えて石綿障害予防のルールが関係します。石綿の有無を調べる人、作業を管理する人、実際に作業する人には役割の違いがあります。「石綿の資格を持っている人がいる」という一言だけでは、誰が何をするかは分かりません。

事前調査と作業の教育は別の役割である

石綿総合情報ポータルは、解体・改修工事では規模の大小にかかわらず、工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について石綿含有の有無を事前調査する必要があると案内しています。一定規模の工事では、調査結果の報告も関係します。調査は、建築物石綿含有建材調査者など一定の知識を持つ者が行う制度であり、作業に従事する人の特別教育とは目的が異なります。

発注者や未経験者は、「調査済みか」「調査を行った人の要件は何か」「作業者への教育はどうするか」を別々に確認します。事前調査を行う人の要件と、現場で石綿に関わる作業者への教育を、一つの『石綿資格』としてまとめないことが重要です。

石綿使用建築物等解体等業務特別教育は、従事者に関係する

厚生労働省の石綿総合情報ポータルは、石綿等が使用されている建築物、工作物または船舶の解体等の作業に労働者を就かせるとき、事業者がその労働者へ特別教育を行わなければならないと説明しています。教育内容には石綿の有害性、使用状況、粉じんの発散を抑制するための措置、保護具の使用方法などが含まれます。

これは、未経験者が自己判断で講習を一つ受ければ、どの石綿作業もできるという制度ではありません。どの建材・作業へ従事するか、事前調査結果はどうか、作業計画と保護具は何かを、事業者が確認して教育を行います。石綿作業へ入る前は、修了証の有無だけでなく、調査結果・作業計画・保護具の説明を受けているかを確認する必要があります。

石綿作業主任者は、作業方法を決めて指揮する役割

石綿を含む建築物等の解体・改修では、対象となる作業で石綿作業主任者の選任が関係します。厚生労働省のQ&Aは、石綿作業主任者に作業方法の決定、労働者の指揮等の業務を行わせることを説明しています。特別教育を受けた作業者と、作業主任者として選任される人は同じ立場ではありません。

未経験者が理解したいのは、自分が主任者になるまでの近道ではなく、誰の指示でどの手順を守るかです。石綿作業主任者の選任は、現場で作業者を指揮する体制の確認であり、作業者全員へ同じ資格を求める話ではありません。

役割 主な仕事 混同しないポイント
事前調査を行う人 建材に石綿が含まれるかを工事前に調べ、結果を整理する。 調査の要件と、作業者の特別教育は別です。
石綿作業主任者 対象作業で作業方法を決め、労働者を指揮する。 特別教育を受けた全作業者と同じ役割ではありません。
石綿作業に従事する労働者 計画・指揮に従って、保護具等を用い作業する。 事業者が担当業務に応じた特別教育を行います。
発注者 適切な事前調査・説明・工期を確認し、無理な工期や方法を求めない。 自ら資格を取るより、工事体制を確認する立場です。

受注・施工管理で関係する資格と実務経験

解体の仕事を続けると、作業を安全に行うだけでなく、工程、品質、近隣、廃棄物、発注者との調整を管理する役割を目指す人もいます。この段階で関係する資格は、未経験者が最初に受ける安全教育とは性質が違います。実務経験、受験資格、会社で任される役割を確認しながら進めます。

解体工事施工技士は、現場管理へ進む選択肢

全解工連は、解体工事施工技士(登録解体工事試験)について、解体工事業に従事する現場管理者等の解体工事技術、廃棄物の適正処理、建設リサイクル法に対応した施工管理能力の向上を図ることを目的にすると説明しています。学歴などにより必要な解体工事の実務経験年数が異なるため、未経験入社直後に受験するための資格ではありません。

解体工事業登録の技術管理者や、建設業の技術者要件に関わることがあるため、会社にとっても重要な資格です。ただし、資格を取れば自動的にすべての工事を一人で管理できるわけではなく、会社の許可、工事規模、配置要件、実務経験が関係します。解体工事施工技士は、現場の安全教育を終えた証明ではなく、経験を土台に施工管理へ進む選択肢として位置づけると理解しやすくなります。

試験の難易度、受験資格、勉強方法、年収との関係は、解体工事施工技士の記事で詳しく確認してください。公開前にリンク先の公開状態とURLを再確認します。

現場責任者が仮囲いの出入口と搬出路を見渡して管理する解体現場
施工管理は資格名だけでなく、現場全体の安全・工程・搬出を読む経験と結び付きます。

施工管理技士・建築士・技能士などは、会社の要件と照合する

解体工事に関する技術者要件には、解体工事施工技士のほか、土木・建築の施工管理技士、建築士、技術士、とび技能士などが関係する場合があります。どの資格がどの要件に使えるかは、合格年度、種別、解体工事に関する経験、登録講習の受講などで扱いが変わる場合があります。

そのため、「一級なら解体は全部できる」「二級なら現場に使えない」といった単純な理解は避けます。会社が受注する工事、営業所の要件、現場での主任技術者・監理技術者の配置を、最新の行政案内と照合する必要があります。施工管理系の資格は名称だけで配置可否を決めず、資格の種別・合格時期・解体経験を会社と行政の現行基準で確認することが必要です。

登録解体基幹技能者は、熟練技能者の次の段階にある

登録解体基幹技能者は、現場の基幹的な役割を担う熟練技能者に関係する講習です。全解工連の案内には、登録解体工事講習修了者や施工管理技士等の資格、複数の技能講習・特別教育など、受講に必要な条件が示されています。未経験者が最初の目標にするものではなく、作業の幅と経験を積み、チームをまとめる立場へ進む段階で検討します。

この資格を目標にする場合も、先に必要な修了証を数だけ集めるのではなく、現場での役割、作業経験、会社の配置計画を確認します。基幹技能者は『資格を増やした人』ではなく、工程と人員を理解して現場の中心を担える経験者を想定した制度だと捉えると、取得順を誤りにくくなります。

建設キャリアアップシステムの能力評価は、資格そのものと別に見る

建設キャリアアップシステムの能力評価は、保有資格、就業日数、職長経験などをもとに技能者の能力を評価する仕組みです。解体工にも評価区分があり、全解工連が解体技能者のレベル判定に関する案内を公開しています。これは、車両系建設機械の講習や解体工事施工技士の試験を置き換えるものではありません。

採用後にカード登録や能力評価を勧められた場合は、どの資格・経験を登録するのか、会社の就業履歴とどう結び付くかを確認します。能力評価は、作業に必要な法定教育を省略する仕組みではなく、保有資格と就業経験を見える化する仕組みとして扱うことが大切です。

資格取得にかかる費用は、受講料だけでは決まらない

「解体資格の費用」を調べると、講習ごとの受講料だけを比べた表が見つかります。しかし、全国共通の料金表はありません。登録教習機関、地域、講習時間、保有資格による一部免除、教材、写真、再交付、交通費、宿泊、受講日が勤務扱いかどうかで実際の負担が変わります。受験資格が必要な試験では、証明書類を集める時間も含めて考える必要があります。

費用を「本人負担」と決める前に会社へ聞く

雇用先によっては、業務に必要な特別教育や技能講習を会社が手配し、受講料を負担する場合があります。一方で、採用前の任意資格、転職時に持参を求められる資格、更新や再交付の扱いは会社ごとに異なります。「資格取得支援あり」という表現だけでは、対象の資格、上限、交通費、受講日の賃金、退職時の扱いまでは分かりません。

比較するなら、候補の会社に同じ質問をします。受講料の金額だけでなく、業務上必須か、受講日は勤務扱いか、交通費・再受講費・更新費を誰が負担するかを一枚にして比べると、実質負担を見誤りにくくなります。

費用の項目 確認する内容 見落としやすい点
受講料・受験料 講習・試験の基本料金、教材費、免除の有無 会場・年度・保有資格で変動する。申込前に公式案内を見る。
移動・宿泊 会場までの交通費、遠方会場の宿泊、駐車場 地方会場が少ない講習では、受講料より移動費が大きくなることがある。
証明・再交付 写真、住民票等の書類、修了証紛失時の再交付 実務経験証明は料金より会社との確認時間がかかる。
受講日の扱い 勤務扱い、賃金、休日受講、代替要員 自己負担額がゼロでも、休日・移動時間の負担がある場合がある。
更新・継続教育 更新の有無、講習、登録、カードの維持費 取得時だけでなく、数年後の更新条件を確認する。

受講料の比較は、同じ講習・同じ条件で行う

技能講習と特別教育は、名称が似ていても内容や対象範囲が違う場合があります。料金だけを見て別の講習を選ぶと、希望する作業の要件を満たさない可能性があります。複数の教習機関を比較する場合は、講習名、対象業務、受講資格、日数、教材、修了証の扱い、追加費用を同じ列へ並べます。

会社が指定する教習機関がある場合は、受講料を安くするためだけに別の講習へ申し込む前に確認します。費用比較は『安い講習』を探す作業ではなく、予定する業務に使える同一の教育を、総負担で比べる作業です。

実務経験が必要な資格は、勉強費用以外の準備がある

解体工事施工技士など、受験資格に実務経験がある資格では、受験料や教材費のほかに、経験を証明する書類の確認が必要になります。転職を繰り返した場合、過去の勤務先へ証明を依頼する必要が出ることもあります。受験案内に記載された経験の範囲と、実際に自分が行った業務が一致するかを早めに確認します。

資格取得を会社が支援する場合でも、申請書の内容を本人が読まずに任せきりにしないことが大切です。受験資格の確認は申込締切の直前にせず、経験を積み始めた段階で会社と記録の残し方をすり合わせると、費用を払った後に受験できない事態を避けやすくなります。

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自分に必要な資格を決めるための実践手順

資格の一覧を見ても、自分に必要なものが決められないときは、作業から逆算します。ここでは、未経験者が就職先へ聞く場合と、すでに働いている人がキャリアを考える場合の両方に使える順番を示します。資格名の暗記ではなく、現場の役割を言葉にすることが先です。

手順1:希望する仕事を一つの動詞で言う

「解体をやりたい」だけでは、必要な教育を絞れません。「重機を操作したい」「玉掛けを担当したい」「木造の手元作業から覚えたい」「石綿の作業に関わる可能性がある」「将来は現場を管理したい」のように、最初の希望を一つの動詞にします。希望がまだない場合は、「当面は安全な手元作業を覚えたい」と伝えて構いません。

一つに絞るのは、他の仕事を諦めるためではなく、最初の教育を確認するためです。自分の希望を『資格名』ではなく『やりたい作業』で伝えると、雇用先は必要な教育と経験の順を説明しやすくなります。

手順2:その作業で、誰が教育を行うかを聞く

特別教育のように事業者が労働者へ行うもの、登録教習機関で受講する技能講習、試験実施機関へ本人が申し込む試験では、手続の主体が異なります。会社が手配するのか、自分で会場を探すのか、受講日はいつか、修了証を会社が保管するのか本人が保管するのかを確認します。

口頭の説明だけでなく、採用条件、社内の資格取得制度、受講案内の写しなどで確認できると安心です。教育の名前と実施者を同時に確認すれば、『取ってきてください』が法定教育なのか任意の自己研さんなのかを判断しやすくなります。

手順3:受講条件と実務経験の開始日を確認する

未経験者でも受けられる教育がある一方で、年齢、経験、学歴、保有資格などが受講・受験条件になるものもあります。条件は制度改定されるため、古いブログの数字だけで判断せず、公式の受験案内や技能講習規程を確認します。経験年数を数える場合は、いつからどんな業務に従事したかが分かる記録を残します。

転職時は、前の会社での経験が必要な資格の要件に使えるかも確認します。『何年働けば取れるか』より先に、どの作業を、どの立場で、どの書類に残す経験として数えるのかを確認することが確実です。

手順4:費用と受講日の扱いを文書で確認する

受講料を会社が負担しても、交通費、宿泊、受講日の賃金、休日受講、再試験、更新の扱いは別の場合があります。質問するときは、相手を疑うためではなく、予定を立てるために確認する姿勢が大切です。「業務に必要な講習の受講料・交通費・受講日は、どのような扱いですか」と聞けば、制度の説明を受けやすくなります。

回答が曖昧な場合は、制度がないと決めつけず、予定する資格を一つ指定して再確認します。費用の確認は、採用後に不満を言うためではなく、必要な教育を無理なく受けて安全に働くための準備です。

手順5:一年後・三年後の役割から逆算する

最初の一年は、現場の安全ルール、工具、養生、分別、合図、搬出の流れを覚える時期です。その後に、機械操作、特定作業の主任者、施工管理、施工技士など、担当範囲に合わせて進みます。年収や役職を急いで決めるより、現在の経験が次の資格の受験資格・配置要件にどうつながるかを上司へ聞く方が現実的です。

資格と年収の関係は一律ではなく、地域、雇用形態、担当範囲、夜間・遠方の勤務、会社の賃金制度でも変わります。資格を取れば必ず収入が上がるとは約束せず、資格取得後に任せる作業と評価基準を確認することが将来設計に役立ちます。収入の見方は、解体業の年収を経験・資格・地域別に整理した記事も参照してください。

発注者が解体業者の資格について確認するときのポイント

この記事は主に解体業界で働く人向けですが、家の解体を依頼する発注者にも、資格の見方は役立ちます。ただし、発注者が資格名を大量に指定して施工方法を決める必要はありません。工事の内容に合わせて、会社がどの許可・登録・技術者・安全管理体制で進めるかを説明できるかを確認します。

資格証の有無だけで業者を判断しない

解体工事施工技士や施工管理技士の資格は、施工管理能力を考える材料になります。しかし、見積りに資格名が一つ書かれていても、工事の範囲、石綿の事前調査、近隣への配慮、廃棄物の処理、現場の安全計画まで十分かは別に確認が必要です。反対に、資格名を細かく並べていなくても、必要な体制を正確に説明できる会社もあります。

発注者は「この工事では、どの資格者・責任者が、どの役割を担いますか」と尋ねます。資格証の枚数を比べるより、工事内容に応じた調査・選任・教育・連絡体制を具体的に説明できるかを見る方が、依頼判断に役立ちます。

石綿では、調査結果と作業体制を確認する

石綿の可能性がある建物では、事前調査の結果、必要な届出・報告、作業者への教育、作業主任者の選任、飛散防止の方法などが関係します。発注者が「石綿の資格を持つ人はいますか」とだけ聞くより、「事前調査は誰がいつ行い、結果はどう説明され、作業中の安全対策は何ですか」と確認する方が具体的です。

工期や価格を優先して、調査・説明の時間を省くよう求めることは避けます。石綿の話では、資格者の有無を一言で終わらせず、調査結果から工事計画までのつながりを確認することが安全と適正な工事につながります。

見積書では「資格費」を単独の品質保証と見ない

見積書に「資格者配置費」「安全管理費」などの項目がある場合、それが何を含むのか確認します。法令上必要な体制、現場の人員、講習、保護具、届出、交通誘導、近隣対応は、工事内容によって分けて計上される場合も一式の場合もあります。単価の高低だけでは内容を判断できません。

質問するときは、「この費用で、どの作業の、どの体制が含まれますか」と聞きます。資格に関する費用を『払えば安全になるオプション』と捉えず、必要な施工体制を説明する見積項目として確認することが大切です。

作業別に見る資格地図|木造・内装・RC造・搬出で何が変わるか

同じ解体工事でも、木造家屋の手ばらし、内装材の撤去、鉄骨やコンクリート造の工作物の解体、発生材の積込み・搬出では、危険の種類が異なります。資格名を「解体なら全部必要」と並べるより、作業のどこで墜落、崩壊、飛来、挟まれ、粉じん、火気、荷の落下が起きるかを先に見ます。会社は施工計画に基づいて人員と教育を決め、作業者は自分の担当を理解して従事します。

木造解体では、手元作業と機械作業を同じにしない

木造家屋の解体では、養生、内装材の分別、手ばらし、屋根・壁・床の撤去、発生材の集積、機械による取り壊し、搬出などが順に行われます。手元作業を担当する人には、工具の扱い、飛散物、釘、足元、重い物を持つ姿勢、重機の近くに入らないルールが重要です。解体用重機を操作する人には、別に機械操作のための教育・講習が関係します。

未経験者は「木造だから簡単」と考えず、建物の傷み、隣家との距離、道路幅、残置物、石綿の有無で危険が変わることを理解します。木造解体で最初に身につけるべきなのは、重機の資格名ではなく、作業区域の外へ出る判断と、指示が分からないときに止まる習慣です。

内装解体では、粉じん・石綿・設備の確認が先にある

店舗、事務所、集合住宅などの内装を撤去する作業では、建物を全て壊す工事とは異なり、残す部分、電気・ガス・水道などの設備、共用部の養生、搬出時間、粉じんと騒音への配慮が関係します。壁や天井を外す前に、石綿の事前調査結果、残置設備の停止、周囲の立入管理を確認する必要があります。

内装を手作業で外す人にも、石綿の可能性がある建材へ従事するなら特別教育などが関係します。内装解体は『軽い作業』と決めつけず、外す材料・残す設備・石綿調査結果を確認してから、必要な教育と保護具を決めることが重要です。

RC造・鉄骨造では、構造の安定と作業主任者の役割が大きい

鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物・工作物では、部材の重量、倒壊方向、切断順、支持の状態、重機の配置、吊り作業などが木造より複雑になることがあります。コンクリート造の工作物の解体等に関する作業主任者、鉄骨の組立て等、地山や土止めなどの要件は、対象作業・構造・方法に応じて確認します。作業主任者の講習には受講資格があるものもあります。

現場で「主任者がいる」と聞いたときは、役割を曖昧にせず、作業方法、立入禁止、作業者への指示がどう決められているかを見ます。構造物の解体では、資格者の配置を名簿上の条件で終わらせず、崩壊を防ぐ順序と作業者への指揮が現場で機能しているかが重要です。

発生材の積込み・搬出では、荷役と車両を分けて考える

解体で出る木材、コンクリートがら、金属くず、内装材は、分別・集積・積込み・運搬・処理へ進みます。吊り上げる作業、フォークリフト等を扱う作業、ダンプやトラックを運転する作業は、同じ「搬出」でも必要な免許・技能講習・許可が異なります。車両を道路で運転するための免許と、現場内で建設機械を操作するための講習も同じではありません。

無資格の人が荷役や車両に近づけないという単純な話ではなく、担当者、誘導、積載、荷崩れ防止、周囲の立入規制を計画します。搬出で確認するべきなのは『運転できる人がいるか』だけでなく、積む人・吊る人・誘導する人・運ぶ会社の役割がつながっているかです。

工事・作業の場面 先に確認する危険 資格・教育を考える順番
木造の手ばらし・分別 釘、落下物、足元、重機との接触、粉じん 雇入れ時・現場の安全教育→担当工具・作業の教育→必要に応じた講習
内装の撤去 石綿、設備、粉じん、共用部、搬出経路 事前調査結果→石綿関係の教育→設備・養生の作業手順
RC造・鉄骨造の解体 崩壊、飛来、吊り荷、重機、足場 施工計画→作業主任者等の選任→担当別の技能講習・特別教育
発生材の積込み・搬出 荷崩れ、挟まれ、車両接触、過積載 荷役・運転の担当分け→必要な講習・免許→誘導・積載手順

資格取得で起こりやすい失敗と避け方

資格を増やそうとする姿勢は大切ですが、順番を誤ると費用、時間、現場の安全のどれにも良い結果になりません。ここでは、未経験者と採用する会社の双方が避けたい考え方を整理します。すでに修了証を持っている人も、今の現場の担当作業と合っているかを見直してください。

求人の「資格取得支援」を、全額負担の約束と解釈する

求人に資格取得支援と書かれていても、対象となる資格、合格時の支給、受講料の立替、交通費、受講日が休日か勤務日か、一定期間の勤務条件があるかは企業によって違います。口頭で聞いた内容と採用後の制度に差が出ないよう、面談の段階で具体的な講習名を一つ挙げて確認することが必要です。

質問がしにくい場合は、「最初に必要になる教育を受ける日は勤務扱いになりますか」「重機を担当する場合、受講料と交通費はどうなりますか」と聞きます。支援の有無を曖昧な安心材料にせず、最初の一年に必要な教育を具体化して費用負担を確認することが大切です。

修了証があれば、どの現場でも同じ作業を任されると考える

技能講習の修了証を持っていても、初めて使う機械、初めて入る現場、初めて扱う構造物では、会社の手順と現場の条件を確認する必要があります。重機であればアタッチメント、作業半径、地盤、周囲の建物、誘導者との合図が変わります。石綿では事前調査結果と作業計画が変わります。

経験者が転職する場合も、以前の現場のやり方をそのまま持ち込まないことが重要です。修了証は必要な知識・技能を学んだ記録であり、新しい現場の危険を見なくてよい許可証ではありません。

受験資格の実務経験を、自己判断で数える

受験資格に実務経験がある試験では、対象となる工事、勤務形態、経験期間の数え方、証明者、添付書類が定められています。「解体会社に在籍していたから全部の期間が使える」「現場に出た日数だけを合計すればよい」とは限りません。案内を読んでも不明な場合は、試験実施機関へ確認し、回答を記録します。

会社側も、将来資格を取る従業員の仕事を日報・配置記録へ残すことで、本人のキャリア形成を支えられます。実務経験は履歴書に書く年数ではなく、制度の定める作業に従事したことを説明できる記録として扱うことが必要です。

資格を取ることが、単独作業の条件だと誤解する

解体作業はチームで進めます。特別教育や技能講習を修了しても、経験の浅い人へ危険な単独作業を任せることが安全とは限りません。職長、作業主任者、重機オペレーター、手元、誘導者の連携、朝礼、KY、作業計画があって初めて安全を確保しやすくなります。

本人は、分からない合図、見えない死角、無理な姿勢、予定外の石綿らしき材料を見つけたときに作業を止めて報告することが求められます。資格取得の目的は一人で何でもできるようになることではなく、役割と限界を理解して安全なチーム作業へ加わることです。

採用面談・現場配属でそのまま使える確認文

資格に関する質問は、待遇交渉だけではありません。自分に必要な教育を早めに知り、危険な作業へ準備なしで入らないための確認です。以下の文は、未経験者が採用面談や入社後の面談で使える形にしています。すべてを一度に聞く必要はなく、希望する作業に関わる項目から使ってください。

未経験で入社する前の質問文

「未経験で入社した場合、最初の三か月はどのような作業から始めますか。現場に入る前に受ける安全教育や特別教育があれば、講習名と受講時期を教えてください。将来、重機操作や施工管理を目指す場合に、どのような経験を積むのが一般的ですか。」という聞き方なら、会社の教育計画を確認できます。

回答を聞いたら、講習名を覚えるより先に、最初に入る現場と指導者の説明が具体的かを見ます。未経験者の面談では、資格の数より『誰から、どの作業を、どの順で教わるか』が答えられる会社かを確認することが重要です。

重機・石綿作業を希望する場合の質問文

「将来は解体用の車両系建設機械の操作に関わりたいと考えています。入社後に必要になる講習の区分、受講の時期、受講料と交通費の扱いを教えてください。石綿の可能性がある現場では、事前調査結果と作業者への教育をどのように説明していますか。」と聞きます。

この質問で、会社が資格の名称だけでなく、石綿調査、安全教育、配置を結び付けて説明できるかが分かります。希望作業を伝えるときは、すぐに担当させてほしいと求めるより、必要な教育と経験の段階を確認する姿勢が安全です。

経験後に施工管理へ進みたい場合の質問文

「解体工事施工技士や施工管理の資格を将来目指したいです。受験資格に使う実務経験は、社内でどのように記録していますか。資格取得後には、どのような工程・人員・近隣対応を担当する機会がありますか。」と聞きます。経験の記録方法と、資格取得後の役割を同時に確認できる質問です。

会社から曖昧な回答しか得られない場合は、資格の支援制度がないと即断せず、受験案内と自分の担当予定を照らして再度尋ねます。施工管理を目指す人は、試験対策の前に、現場で経験すべき業務とその記録を確認することから始めます。

講習・特別教育・試験の案内を読むときのチェックポイント

資格情報を調べるときに困るのは、制度名が似ていることと、古い料金・受講条件が検索結果に残ることです。正しい順番は、まとめ記事で全体像を掴み、申込み前に試験実施機関、登録教習機関、法令・行政資料の現行案内を読むことです。SNSや知人の体験談は会場の雰囲気を知る参考にはなりますが、受講資格や配置要件の正本にはしません。

「技能講習」と「特別教育」の名称・対象業務を照合する

技能講習と特別教育は、どちらも安全に働くための教育ですが、対象となる業務や修了の扱いを一律にはできません。教習機関の案内を開いたら、最初に講習の正式名称を確認します。次に、対象業務、受講資格、学科と実技の内容、日数、持ち物、修了証の発行者を見ます。似た名称の講習でも、予定する機械や作業に合わないことがあります。

会社から受講を求められた場合は、案内のURLまたはPDFを共有してもらい、予定作業と照合します。講習を申し込む前に、正式名称と対象業務を一行ずつ照合すれば、『似ている別の講習』へ費用を払う失敗を減らせます。

受講資格の「経験」は、年数と内容の両方を見る

作業主任者の技能講習や施工管理に関する資格のなかには、実務経験や保有資格によって受講・受験できる人が決まるものがあります。案内に「経験者」と書かれていても、単に業界にいた年数なのか、特定の作業へ従事した年数なのか、修了後の経験を指すのかで意味が変わります。実務経験証明を求められる場合は、勤務先の証明が必要になることがあります。

現場で経験を積んでいる人は、作業内容を過小評価せず、日報・配置表・工事名・担当業務を残します。一方で、要件に当たるか分からない仕事を自己判断で申請書へ書くことは避けます。受講資格の経験は『長く働いた』という感覚ではなく、公式案内の対象作業を説明できる記録で確認することが必要です。

費用案内の税込・教材・再試験・キャンセル条件を確認する

受講料を比較する際は、表示額に教材、消費税、実技使用料、証明写真、修了証の送料が含まれるかを見ます。試験の場合は、受験料だけでなく、受験資格の書類、再受験、合格後の登録や講習が別になる場合があります。急な欠勤で受講できなくなったときの振替・キャンセルの条件も、仕事をしながら受ける人には重要です。

雇用先が費用を出す場合も、申し込みを自己判断で取り消さず、担当者へ連絡します。費用の総額は申込画面の一つの数字ではなく、受講完了までに必要な書類・移動・欠席時の扱いまでを含めて確認すると予算と予定を組みやすくなります。

修了証の保管と再交付の連絡先を決める

技能講習や特別教育の修了証は、転職や配置確認の際に提示を求められることがあります。原本を会社が保管する場合、本人が持つ場合、写しを双方で保管する場合があるため、入社時にルールを聞きます。紛失した場合に備えて、講習名、受講日、実施機関、修了証番号を自分でも記録しておくと、再交付の照会をしやすくなります。

スマホで撮影した画像だけを唯一の証拠にせず、個人情報の扱いにも注意します。修了証は『取った証明』で終わらせず、誰がどこに保管し、紛失時にどの実施機関へ連絡するかを決めておくと、現場異動や転職の際に慌てません。

申込み前の確認欄 公式案内で見る場所 会社または本人が決めること
正式名称・対象業務 講習名、対象となる作業・機械、修了の扱い 現在または予定する担当業務に合うか
受講・受験資格 年齢、学歴、保有資格、実務経験、証明書類 経験の数え方、証明を依頼する担当者
日程・会場 学科・実技の日数、開始時刻、会場、持ち物 勤務扱い、交通手段、代替要員
費用 受講料、教材、税、再試験、キャンセル条件 負担者、精算方法、交通費・宿泊費
修了後 修了証、再交付、更新・継続教育の有無 保管場所、コピー、配置時の確認方法

会社が資格取得を支えるときに整えるべきこと

採用する会社にとって資格取得は、求人の見栄えを良くするためだけの制度ではありません。担当作業に必要な教育を適切な時期に受けさせ、修了状況を把握し、経験者を施工管理へ育てることは、事故防止と安定した施工の両方に関わります。この記事を読む採用担当者や現場責任者は、未経験者が「何をいつ受けるか」を説明できる状態を目指してください。

教育計画は、採用時の約束と現場配属をつなぐ

採用面談で「資格取得を支援する」と伝えるなら、入社後に誰が教育計画を説明するか、現場の空き状況で受講が遅れたときにどう調整するかまで考えます。安全上必要な教育を、繁忙を理由に後回しにしないことが前提です。未経験者には、資格の難易度よりも、最初の現場で何をしてはいけないかを具体的に伝える必要があります。

教育計画を紙や共有資料にする場合は、取得を約束する資格だけでなく、対象作業、実施者、受講時期、費用の扱い、修了証の保管先を記録します。採用時の説明と現場配属の間に教育計画を置くことで、未経験者が準備不足のまま危険な作業へ入ることを防ぎやすくなります。

資格者の名前を並べるより、配置と引継ぎを確認する

会社が多数の資格者を保有していても、必要な工事の日に、必要な役割の人が配置されなければ体制として十分ではありません。営業所の技術者、工事現場の主任技術者・監理技術者、作業主任者、重機の担当者、石綿関係の役割などを、工事の内容と時期に合わせて確認します。欠員や現場変更が生じたときの引継ぎも重要です。

作業者には、誰が現場の責任者か、誰の指示に従うか、予定外の危険を見つけたときの報告先を伝えます。資格者リストは安全体制の出発点であり、現場で誰が指揮し、誰が代わり、作業者が誰へ報告するかまで決めて初めて役立ちます。

経験を積む機会と安全の線引きを両立させる

人材を育てるには、未経験者へ少しずつ作業の幅を広げる機会が必要です。しかし、教育中の人へ資格・経験が必要な作業を単独で任せたり、ベテランの監督が届かない範囲へ配置したりすることは避けなければなりません。見学、補助、指導下の作業、担当作業の拡大という段階を、現場の危険と本人の理解度に合わせます。

本人も、早く仕事を覚えたい気持ちから無理を隠さず、分からないことを報告します。資格取得支援の価値は、修了証を早く増やすことではなく、経験の浅い人が安全な指導下で役割を広げ、将来の施工管理へ進めることにあります。

制度の変更を、古い社内表だけで判断しない

試験制度、受験案内、石綿関係の規則、登録教習機関の会場・料金は変わることがあります。会社が過去に作った資格一覧は便利ですが、年度、資格の正式名称、対象業務、受講条件が現在も同じとは限りません。特に、転職者の保有資格を配置要件へ使うときや、新しい機械・作業方法を採り入れるときは、行政・試験実施機関・教習機関の現行案内と照合します。

作業者は古い資料の違いに気付いたら、独断で受講を見送らず安全担当へ報告します。資格の管理は一度作った一覧を守ることではなく、現場の作業内容と最新の制度を定期的に照合し続けることです。新しい工程へ入る前、配置を変える前、申込みをする前の三つの時点で確認すれば、誤った前提のまま進むことを避けやすくなります。迷ったときは、作業を始めてから判断せず、会社の安全担当と公式の案内へ戻って確認してください。確認日と案内の版を残すと、後日の見直しと引継ぎ、共有にも役立ちます。

よくある質問

Q未経験・無資格でも解体会社へ就職できますか?
Ajob tagでは、解体工は入職に当たり特に資格や学歴が必要とされないと案内されています。ただし、担当する危険有害作業には、事業者による教育や必要な技能講習が関係します。採用前に最初の業務、教育の時期、単独作業までの手順を確認してください。
Q解体工事施工技士を取れば、すぐに現場責任者になれますか?
A施工技士は施工管理能力に関係する資格ですが、会社で任せる役割、工事規模、配置要件、実務経験は別に関係します。資格取得だけで役割が自動的に決まるわけではないため、取得後に担当する業務と評価基準を会社へ確認します。
Q重機の資格は入社前に自費で取るべきですか?
A解体用重機を操作する予定が明確なら検討材料になりますが、機械の種類や担当は会社により異なります。先に配属予定、必要な講習区分、費用負担、受講日を確認してから決めると、使わない講習へ先に費用を払うことを避けられます。
Q石綿の特別教育と石綿作業主任者は同じですか?
A同じではありません。石綿使用建築物等の解体等に従事する労働者への特別教育と、対象作業で作業方法の決定・労働者の指揮を担う作業主任者は役割が異なります。調査者、主任者、作業者を分けて、現場の体制を確認してください。
Q資格取得の費用は会社が必ず負担しますか?
A負担範囲は雇用先ごとに異なります。受講料だけでなく、交通費、教材、受講日の賃金、更新・再交付の扱いまで確認が必要です。業務上必須の教育と、任意の自己研さんを分けて文書または制度説明で確認しましょう。
Q発注者は資格証の提出を求めれば安心ですか?
A資格証だけでは工事体制全体を判断できません。工事内容に応じた許可・登録、石綿事前調査、安全管理、責任者、廃棄物処理の説明がつながっているかを確認することが重要です。

まとめ

解体工事に必要な資格は、未経験者が入社前に全てそろえるチェックリストではありません。安全に作業するための教育、担当作業の技能講習、石綿の調査・主任者・作業者に分かれた要件、経験を積んで目指す施工管理資格、会社の許可・登録を分けて考える必要があります。

まずは希望する作業を言葉にし、雇用先へ「誰が教育を行うか」「いつ受けるか」「費用と受講日はどう扱うか」「実務経験はどう記録するか」を確認してください。資格取得の順番を正しくすることは、最短で修了証を増やすことではなく、安全な作業経験を積みながら次の役割へ進むことです。

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