共有名義の建物を丸ごと解体するには、原則として共有者全員の同意が必要です。持分が過半数でも、固定資産税を多く払っていても、一人だけで工事を発注してよいことにはなりません。同意が取れないときほど、壊す前に「誰が共有者か」「誰が何に反対しているか」「建物に今どんな危険があるか」を分けて確認しましょう。
更新日:2026-09-15
法令・裁判手続は公開前に再確認してください。この記事は一般的な確認順です。
- 建物全体の解体は、民法251条の「共有物の変更」として原則全員同意で進める
- 反対、連絡不能、相続未整理は同じ「同意がない」状態でも、取るべき手続が異なる
- 同意書、費用精算、契約者、残置物、近隣対応を発注前に書面へそろえる
共有名義の建物を解体するには原則全員の同意が必要
共有名義とは、一つの建物を複数人が持分で所有している状態です。親から相続した実家を兄弟姉妹で引き継いだ場合、夫婦や親族で購入した場合、長屋の一棟を複数人で持つ場合などに起こります。登記簿に二人以上の所有者と持分が載っていれば、まず共有を疑います。土地が共有でも建物が単独名義、またはその逆ということもあるため、土地だけ見て判断しないでください。
民法251条は、共有者が他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えられないと定めています。条文には形状または効用の著しい変更を伴わない変更という例外がありますが、建物を取り壊してなくす行為は、この例外を前提に扱えるものではありません。自治体の空き家案内でも、解体のような軽微でない変更には所有者全員の同意が必要と説明されています。
「自分は持分の3分の2を持っているから決められる」と考えて契約するのは危険です。持分の過半数で決められる管理と、建物の存在を失わせる解体は分けて考えます。屋根の一部を応急補修する、侵入を防ぐために施錠する、といった保存・管理の話と、解体工事の発注を同じ扱いにしないことが大切です。
また、解体会社が「共有者の代表者」と名乗る人から相談を受けたとしても、法律上の同意の有無を代わりに確定することはできません。工事の前に所有者・相続人・代理権を確認するのは、依頼者だけでなく、工事後に紛争を広げないための基本です。危険で急ぐ建物でも、誰が発注権限を持つかを飛ばさずに進めます。
管理・保存行為と解体は何が違うのか
民法252条では、共有物の管理に関する事項は持分価格の過半数で決め、保存行為は各共有者ができるとされています。ここでいう保存行為は、財産の価値や安全を保つために必要な行為を指します。例えば、割れた窓から第三者が入らないように仮施錠する、飛散しそうな部分を専門業者へ応急的に固定してもらう、といった場面が考えられます。
ただし、応急措置に必要な範囲は建物の危険度、工事内容、費用、他の共有者へ及ぶ影響によって変わります。危険だからといって、建物全体の取り壊しまで当然に一人で決められるとはいえません。行政から指導を受けた、近隣から瓦の落下を指摘された場合も、通知書と現況写真を共有者へ送り、必要な措置と期限を具体的に相談します。
まず人身・物損の危険を小さくする措置と、所有権を消す全面解体を分けて記録してください。後で「何のために、いつ、どこまで行ったか」を説明できるよう、写真、見積書、連絡先、共有者への通知、実施前後の記録を残します。応急措置の可否に迷うほどの状況なら、自治体の空き家担当窓口と弁護士へ同時に相談する方が安全です。
建物だけでなく土地・借地・担保も確認する
解体を検討するとき、建物の登記だけで決めることはできません。建物を壊した後の土地を誰が使うのか、土地が共有か単独名義か、借地なら地主との契約に収去・原状回復の定めがあるか、抵当権や差押えがあるかで、共有者が納得する条件は変わります。建物の解体には全員同意が取れても、土地売却には別の合意や手続が必要になることがあります。
固定資産税の納税通知書の宛名は、所有者全員を示す書類とは限りません。代表相続人の名前で届くことや、死亡した名義人のままの登記が残ることがあります。法務局で土地・建物それぞれの登記事項証明書を取得し、権利部の所有者、持分、抵当権などを確認します。相続による共有なら、戸籍や遺産分割協議の有無も並べて確認します。

同意を集める前にそろえる資料と話し合いの順番
同意が取れない理由は、必ずしも「解体に反対」だけではありません。費用が不明、思い出の品を出していない、土地を売ることには反対、相続人の一人と連絡を取れていない、工事後の税金が心配など、判断材料が欠けていることがあります。最初から賛成か反対かだけを迫るより、同じ資料を共有して判断できる状態を作ることが近道です。
まず、建物の所在地、建築年・構造が分かる資料、現況写真、危険箇所、残置物の量、土地と建物の登記、相続関係、固定資産税の情報を一覧にします。次に、解体の目的を一文で決めます。「倒壊の危険を減らす」「土地を売却できる状態にする」「管理負担を終える」などです。目的が混ざると、必要な工事範囲と費用負担の話がぶれます。
見積りを取る場合も、共有者へ説明するための材料として扱います。建物本体の解体、付帯工事、残置物、庭木・塀、アスベスト事前調査、届出、廃棄物処理、整地のどこまでを含むのかをそろえます。金額だけを比較すると、「誰の家財を残すか」「隣地との境界塀をどうするか」の違いが後から出やすくなります。
共有者を確定し、連絡の記録を残す
登記上の共有者が亡くなっている場合、相続登記や遺産分割が終わっていなければ、誰が最終的に解体へ同意できる立場かを簡単には決められません。相続人が複数いる遺産共有の段階では、一人の相続人が「自分の持分だけで了承した」と言っても、建物全体の処分を進める根拠にはなりません。相続関係が複雑なときは、司法書士や弁護士へ戸籍・登記を見せて確認します。
連絡先が分かる共有者には、電話だけで済ませず、日付が分かる方法で資料と依頼内容を送ります。解体の理由、見積りの対象範囲、費用の案、残置物の確認期限、返答期限、質問先を記載します。反対意見が出たら、感情的なやり取りを重ねる前に、何に反対しているかを「費用」「残置物」「売却」「工事範囲」「時期」に分けて記録します。
返事がないことを、同意と扱わないでください。民法252条には賛否を明らかにしない共有者に関する裁判制度がありますが、これは管理に関する事項の規定です。建物の全面解体のような変更について、返信がないだけで他の共有者が自由に発注できる制度ではありません。住所不明なのか、受け取ったうえで返答がないのかも区別します。
同意書には「解体する」以外の条件も書く
解体への同意を得られた場合は、口頭の約束だけにせず書面を作ります。自治体も、解体の同意取得は書面によることが望ましいと案内しています。書面は万能ではありませんが、工事後に「更地にするとは聞いていない」「庭木は残す約束だった」「費用額を知らなかった」といった認識違いを減らせます。
| 確認項目 | 書面で具体化する内容 | 工事前に確認する理由 |
|---|---|---|
| 対象不動産 | 所在地、建物の種類、土地を含むか | 別棟・物置・共有土地の範囲を取り違えない |
| 工事範囲 | 建物、基礎、塀、庭木、残置物、整地の扱い | 「解体」の言葉だけでは範囲が決まらない |
| 費用と支払 | 見積総額、負担割合、支払時期、追加費用の決め方 | 持分割合と実際の精算方法を分けて合意する |
| 残置物・思い出の品 | 引取り期限、保管・処分の方法、立会い | 家財の処分は解体より先に争いになりやすい |
| 工事後 | 更地の管理、売却・利用の方針、連絡窓口 | 解体同意を土地売却同意と誤解しない |
同意書の署名者が本人か、代理人なら委任の範囲が確認できるかも重要です。成年後見人、相続人の代表、法人、共有者の配偶者など、署名する人と登記上の権利者が違う場合は、なぜ署名できるのかを確認します。共有者が海外にいる、判断能力に不安がある場合は、電子署名や委任状だけで進めず、専門家の助言を受けます。
費用負担は持分割合だけで自動決定しない
共有物の費用については民法上の原則がありますが、実際の解体費用を誰がいつ出すかは、持分、利用状況、相続の経緯、資金余力、工事後の土地利用、共有者間の合意によって調整が必要になることがあります。「持分が2分の1だから必ず費用も2分の1」とだけ決める前に、見積りのどの項目を何のために支出するのかを共有します。
例えば、建物本体の解体は共同で負担する一方、特定の共有者の家財処分や、その人だけが希望する庭木の移植は別精算にする考え方があります。逆に、一人が先に全額を立て替えるなら、返還の時期、利息の扱い、領収書の保管、工事費が増えたときの承認方法を文書にします。後で土地を売った代金から精算する案も、売却の合意とは別問題です。
「とりあえず一人が払う」は、立替えなのか負担なのかを必ず書き分けてください。口頭で曖昧にすると、工事後に請求の根拠や金額を争う原因になります。工事契約書、請求書、振込記録、共有者間の精算合意を同じフォルダで保管しましょう。
全員の同意が取れないときは理由別に進め方を分ける
「同意が取れない」という状況には、所在が分からない人がいる場合、話し合って反対している場合、相続人が確定していない場合、連絡はつくが判断を先延ばしにしている場合があります。法律上使える制度や必要な証拠が異なるため、相手を一括して「非協力的」と扱わないでください。まず現在の状態を一つに分類し、次の相談先を決めます。
連絡先は分かるが反対している共有者がいる場合
反対者がいる場合、他の共有者だけの多数決で全面解体を決めることは原則できません。反対の背景が「更地にすると固定資産税が上がると思う」「売却価格が下がると思う」「仏壇や家財が残っている」「費用が払えない」「まだ住みたい」などなら、理由ごとに資料を示して話し合います。解体の必要性を説明する写真や専門家の所見、複数の見積り、残置物リスト、解体しない場合の維持費・安全対策案を用意します。
話し合いがまとまらないときには、共有物分割請求を含む共有関係の解消を検討する余地があります。民法256条は各共有者が原則としていつでも分割を請求できるとし、協議が調わないときは裁判所へ分割を請求できる仕組みを置いています。ただし、裁判所が建物を解体してよいと一律に判断する制度ではありません。現物分割、代金分割、価格賠償など、財産の性質と事情に応じた方法が検討されます。
「分割請求をすればすぐ更地にできる」と約束する業者や当事者の説明は、そのまま信じないでください。建物の利用状況、共有者の持分、土地との関係、担保権、相続未整理、費用を誰が準備するかで選択肢が変わります。交渉や訴訟の見通しは弁護士へ、登記の整理は司法書士へ相談し、解体会社には確定した工事範囲の見積りを依頼します。
共有者の住所や所在が分からない場合
登記簿に名前はあるが住所が古い、相続後に連絡が途絶えた、海外にいる可能性があるといった場合は、いきなり「所在不明」と決めません。住民票や戸籍の附票等を取得できるか、登記上の住所へ通知が届くか、親族や管理会社が連絡先を知っているかを、個人情報の取扱いに注意して確認します。探した方法と結果を記録することが、後の裁判所手続でも大切になります。
民法251条2項には、他の共有者を知ることができない、または所在を知ることができないとき、裁判所が、所在不明の共有者以外の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をする制度があります。これは、見つからない共有者がいるからといって、残りの共有者が自分たちだけで解体できるという意味ではありません。申立てや裁判所の判断が必要です。
制度を使えるかは、対象者が本当に所在不明か、どの共有者が同意しているか、変更の内容が何かなどで判断されます。解体を急ぐ事情があるなら、建物の危険箇所の写真、行政通知、近隣への影響、見積り、探索記録を整理して弁護士へ相談します。申立て前に工事日を決めたり、着手金を払ったりしないようにしましょう。

相続が終わらず共有者が確定していない場合
親が亡くなった後、建物の登記が亡くなった親の名義のままで、相続人の間で遺産分割協議が終わっていないことがあります。この段階では、登記を見て「父だけの家だから自分が決める」とは限りません。法定相続人の範囲、遺言の有無、相続放棄、相続分の譲渡、遺産分割の進み具合を確認します。
遺産分割協議で建物を誰が取得するかが決まれば、その後の解体判断は整理しやすくなります。一方、危険な空き家で時間をかけられない場合は、相続人全員へ現況と必要な安全措置を知らせ、全面解体と分けて対処を検討します。相続放棄を検討する相続人がいるなら、家財処分や解体契約が単純承認との関係で問題になり得るため、先に専門家へ確認してください。
相続放棄後の保存義務や相続財産清算人の仕組みは、通常の共有建物の解体とは別に確認する必要があります。相続放棄が関係する場合は、当サイトの相続放棄した家の解体費用に関する解説も参照しつつ、個別の権限は弁護士へ確認してください。
急な危険がある場合も単独解体を急がない
屋根材の落下、外壁の剥離、傾いた塀、火災後の損傷などで、通行人や隣地に危険が及ぶ場合は、のんびり同意を待てないことがあります。その場合は、危険箇所を撮影し、必要に応じて自治体、消防・警察、保険会社、専門家へ連絡します。現場へ近づかせない、仮囲い、応急固定など、最小限の安全措置を相談します。
ただし、危険性があることと、共有者の一人が全面解体を単独で契約できることは別です。空家等対策に関する自治体の助言・指導、命令、代執行の制度が関係する場合も、通知の相手、求められる措置、期限、費用の扱いを読み、行政窓口へ現在の共有・相続状況を伝えます。行政が関与しているからといって、共有者間の同意や費用精算が自動で片付くわけではありません。
人の安全に関わる緊急対応は、写真・日時・相談先・実施範囲を残して、全面解体の判断と分けます。緊急性を理由に範囲を広げる前に、対応できる専門家へ具体的な現場状況を伝えてください。
解体費用・工事契約・残置物をどう決めるか
全員同意が得られても、実際の工事で争いになるのは「誰が申し込むか」「誰に請求が行くか」「追加費用を誰が承認するか」「家財を誰が処分してよいか」という部分です。工事の依頼者を一人にまとめる場合でも、その人が他の共有者を代表して契約する根拠と、費用を精算する方法を別紙等で明確にしておくと、解体会社との連絡も整理しやすくなります。
見積書は、建物本体だけでなく、付帯工事や別途項目を分けて確認します。地中埋設物、アスベストの有無、残置物、浄化槽、ブロック塀、庭木、道路使用、隣地養生などは、現地確認後に費用が動くことがあります。追加費用が生じる条件、発見時の写真・説明・承認方法、上限を超える場合の扱いを、契約前に共有者間でも決めます。
| 工事前に決めること | 具体的な確認 | 共有者間で残す記録 |
|---|---|---|
| 契約者と窓口 | 契約名義、代理権、業者との連絡担当 | 全員の同意書、委任の範囲、連絡先一覧 |
| 支払方法 | 前払・中間・完了時の負担者、立替えの有無 | 負担割合、精算時期、振込先、領収書の保管方法 |
| 追加工事 | 地中障害物や残置物が出た場合の承認者 | 写真、追加見積り、承認した日時と方法 |
| 家財・供養品 | 引取り、保管、処分、立会いの期限 | 残す物のリスト、写真、処分への同意 |
| 工事後の土地 | 整地の状態、境界、雑草管理、売却の検討 | 解体同意と売却同意を分けた議事・合意書 |
解体同意は、土地売却、持分売却、建替え、賃貸、駐車場利用への包括同意ではありません。工事後の土地利用を同時に考えることは有益ですが、同じ署名で「すべて任せる」と曖昧にしない方がよいでしょう。特に、土地を売るには買主、価格、仲介、引渡し、共有者の持分処分という別の判断が必要です。
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共有名義の建物の工事範囲についてご相談ください
権利関係の結論を代わりに判断することはできませんが、合意後に確認したい工事範囲や現地状況、見積りの項目はご相談いただけます。
残置物は「共有者全員が不要」と確認してから処分する
建物の中にある家具、写真、仏壇、書類、貴金属、工具などは、建物の共有関係とは別に、誰の所有物かが問題になることがあります。空き家に見えても、誰かが保管している物が残っている場合があります。解体日が決まってから慌てないよう、室内・物置・庭を写真で記録し、引き取りを希望する物と期限を共有者へ確認します。
残置物を処分する費用も、建物解体費に含むのか、特定の共有者が負担するのかを分けて見積りへ入れます。処分を急ぐ事情がある場合も、重要書類や思い出の品を確認する日を設け、立会いが難しい人には写真や一覧を送るとよいでしょう。処分した後に戻せないものほど、同意の記録を残す意味が大きくなります。
近隣説明は所有者間の合意後に内容をそろえる
解体工事では騒音、振動、粉じん、車両の出入りなどが近隣に影響します。工事会社と近隣説明を行う前に、共有者の窓口を一本化し、工期、作業時間、養生、緊急連絡先を確認します。共有者間で解体範囲が決まっていない状態で近隣へ「来月から壊します」と伝えると、後で計画が変わったときに負担が増えます。
隣地との境界にある塀や樹木、長屋の接続部、越境物がある場合は、誰の所有か、どの範囲を解体するかを追加で確認します。隣地所有者の同意が必要な工事や、敷地使用の相談が必要な場合もあります。共有者の全員同意と隣地関係の同意は別の問題なので、まとめて省略しないでください。
共有名義の建物を解体するまでの確認手順
共有者間で意見が割れているときほど、最初から工事日を決めず、確認の順番を固定すると話し合いが進めやすくなります。下の手順は一般的な整理です。相続・訴訟・成年後見・借地・担保権がある場合は、途中で専門家へ相談する前提で使ってください。
この順番で進めると、解体会社へ相談する内容も明確になります。すべての法的問題を自分で解決してからでないと見積りを取れないわけではありません。しかし、同意の見通しがないまま契約を先行させると、着手金、キャンセル、近隣説明、残置物の準備が無駄になるおそれがあります。

解体する前に確認したい費用以外の影響
共有者の話し合いでは、見積金額が最初の争点になりがちです。しかし、建物をなくすと、税金、保険、住所利用、家財、土地の利用計画などにも影響が出ます。反対する共有者がいるときは、単に「費用はいくらか」を示すより、解体した場合としない場合の違いを同じ条件で整理すると、何を心配しているのかを話しやすくなります。
例えば、住宅用地に関する固定資産税の特例は、建物を取り壊した後の土地に同じ形で適用されるとは限りません。一方で、老朽建物を残すことで維持管理、倒壊、火災、不法侵入、草木、近隣対応の負担が続くこともあります。税額の見込みは土地の所在地や課税状況で変わるため、市町村の資産税担当窓口へ地番を示して確認します。一般記事の「更地なら税金が何倍」という説明だけで、共有者へ断定しないことが重要です。
火災保険や施設賠償責任保険がある場合は、解体前後で契約をどうするかも確認します。契約者、被保険者、空き家の扱い、解約返戻金、解体中の事故が補償対象かは商品ごとに異なります。共有者の一人が保険料を払っていたとしても、解約や保険金請求を単独で決めてよいとは限らないため、保険証券と契約内容を共有します。
解体しない選択肢も比較材料にする
話し合いの目的は、必ず解体に賛成させることではありません。補修して利用・賃貸できる可能性があるか、売却時に建物を残すのか更地にするのか、当面は危険箇所だけ直すのか、共有持分を買い取るのかなど、複数の選択肢を比較します。建物の状態、立地、再建築の可否、借地、接道、残置物、地域の規制を確認せずに「壊した方が得」と決めるのは避けましょう。
比較するときは、各案について初期費用だけでなく、誰が決めるか、実行までの期間、近隣への影響、工事後の管理、共有関係が残るかを並べます。解体に反対する共有者が建物の利用を望むなら、利用計画、維持費、管理担当、他の共有者への使用対価など、具体的に確認する必要があります。抽象的に「残したい」と言うだけでは、長期の負担を分けられません。
解体案と存続案を同じ表に置くときは、どちらかを有利に見せるための仮定を混ぜないでください。建物診断、査定、税額、補修見積りが必要なら、それぞれの専門家へ確認します。共有者が判断に必要な資料を受け取ること自体が、同意形成の第一歩になります。
専門家と解体会社へ相談するときの役割分担
共有建物の問題では、誰か一人がすべての答えを出すわけではありません。解体会社は現地の構造、工事範囲、費用、届出、近隣配慮を説明できますが、誰に法的な発注権限があるか、反対者へどの手続を取るか、遺産分割をどうするかを判断する立場ではありません。反対に、法律相談で合意の方向が見えても、現地の危険度や工事条件が分からなければ費用負担の話は具体化しません。
弁護士には、共有者との交渉、共有物分割、所在不明共有者に関する裁判手続、相続放棄や遺産分割が絡む権限を相談します。司法書士には、登記名義、相続登記、必要な戸籍、持分移転の登記を相談します。税理士や税務署・自治体の窓口には、譲渡、相続、固定資産税の個別の扱いを確認します。建物の危険度や補修可能性は、建築士等の専門家が必要になることがあります。
解体会社へは、登記・相続関係を全部解決してからしか相談できないわけではありません。共有者の同意を取るため、建物・付帯物・残置物・整地を分けた概算の考え方や、現地で費用が変わりやすい項目を聞くことはできます。ただし、見積りを受け取ったことを工事依頼、解体同意、近隣への着工予告と取り違えないようにします。
相談時に渡すと話が早い資料
相談前に、土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の課税明細、相続関係が分かる資料、現況写真、行政通知、共有者一覧、これまでの連絡記録、希望する工事範囲をそろえます。全てがそろっていなくても、何が未確認かを明記すると相談先が判断しやすくなります。住所や連絡先など個人情報を含む資料は、送付先と取扱いを確認してから渡してください。
工事については、「建物のみ」「基礎まで撤去」「物置・塀・庭木を含む」「家財は別」「整地の仕上がり」といった希望を箇条書きにします。見積りが高いか安いかだけを聞くより、共有者間で決める必要がある選択肢を見つけやすくなります。現地確認の際に立ち会う共有者、鍵の管理者、敷地へ入る許可の確認も事前に行います。
トラブルを広げないために避けたい行動
共有名義の建物は、善意で進めた行動でも、他の共有者から「勝手に財産を処分された」と受け取られることがあります。特に、解体前の残置物処分、工事の予約、着手金の支払い、重機の搬入日決定、近隣への断定的な説明は、後から戻しにくい行動です。同意が未了なら、相談・調査・見積りの段階と、契約・着工の段階を明確に分けます。
共有者と連絡が取りにくいからといって、住所を確認せずに通知を省略したり、親族の誰か一人の返事だけで全員の意思と扱ったりしないでください。相続人に連絡した場合も、その人が登記上の共有者なのか、遺産分割前の共同相続人なのか、代理権を持つ人なのかで意味が違います。相手が感情的な状態なら、やり取りを第三者に見せられる文面に保ち、侮辱や脅しと受け取られる表現を避けます。
また、共有者の一人へ負担を押しつけるために、工事費を不自然に高く見せたり、不要な工事を一括で入れたりすることも避けます。見積りの対象範囲、単価、追加条件を共有し、必要なら複数の会社から条件をそろえた見積りを取りましょう。比較の目的は最安値探しだけではなく、全員がどこに費用がかかるのかを理解することです。
共有者自身が現地へ行けない場合は、写真の撮影日と場所が分かるようにし、危険箇所は遠景と近景の両方を残します。建物内に入る必要がある確認や、屋根・高所・倒壊のおそれがある場所の確認を、無理に家族だけで行わないでください。安全な現地確認は、解体の同意を得るための証拠集めより優先します。現場状況が変わったときは、以前の見積りや同意の前提も変わり得るため、共有者へ再度説明する機会を設けます。
写真や見積りを共有するときは、共有者によって受け取り方が異なることも意識します。スマートフォンで長い資料を読みづらい人には、結論、確認してほしい項目、返答期限を一枚にまとめ、詳しい資料を添えます。話し合いの日時を決めるときも、出席できない共有者が内容を確認できる方法を用意します。手続を急ぐ理由がある場合ほど、情報を渡した日時と内容を残すことが、後の誤解を減らします。
共有者に送る案内には、「この連絡は解体への最終同意を求めるものか、見積り取得への同意を求めるものか」を明記します。段階を混同すると、相手が資料提供に協力しただけなのに工事を承諾したと誤解されるおそれがあります。返答欄も、賛成・反対だけでなく、追加資料が必要、残置物を確認したい、費用案を見直したいといった選択肢を用意すると、話し合いの入口を作りやすくなります。
合意の内容が変わったときは、以前の同意書へ口頭で追記するのではなく、変更した工事範囲、費用、時期、署名日を改めて確認します。特に、アスベスト調査や地中障害物など現地調査後に見積り条件が変わる項目は、誰が追加支出を承認できるかを先に決めます。全員に同じ更新資料を送り、最新版がどれか分かるように管理してください。
判断に時間が必要な共有者には、急ぐ理由と期限の根拠を伝え、回答を待てる期間も示します。
共有名義の建物解体でよくある質問
まとめ|同意が取れない共有建物は、壊す前に権利関係を整理する
共有名義の建物を解体するには、原則として共有者全員の同意が必要です。建物を安全に保つための応急措置や通常の管理と、建物をなくす全面解体は同じではありません。持分が多い、固定資産税を払っている、空き家を管理しているといった事情だけで、単独解体へ進むことは避けましょう。
同意が取れないときは、反対者がいるのか、所在不明なのか、相続が未整理なのか、危険への緊急対応なのかを分けます。登記、相続関係、現況写真、見積り、連絡記録をそろえ、法的な権限は弁護士や司法書士へ、確定した工事範囲と費用は解体会社へ相談する流れが安全です。
全員が納得できる資料と書面を残してから契約することが、工事後の費用・残置物・土地利用の争いを減らします。大切な建物との区切りを急ぎすぎず、次の土地利用まで見通せる順番で進めてください。
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共有名義の建物の工事範囲についてご相談ください
共有者間の合意後に、現地の状況を踏まえた工事範囲や見積り項目を確認します。
※本文画像は画像制作工程で実写調画像へ差し替え予定です。
